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【文庫双六】『クマのプーさん』の作者が書いた“牧歌的”ミステリ──川本三郎

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 令和元・2019年6月13日 新潮社

【文庫双六】『クマのプーさん』の作者が書いた“牧歌的”ミステリ──川本三郎
 川本三郎
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【文庫双六】『クマのプーさん』の作者が書いた“牧歌的”ミステリ――川本三郎


20190619a.jpg

『赤い館の秘密【新訳版】』
著者
A・A・ミルン [著]/山田 順子 [訳]
出版社
東京創元社
ジャンル
文学/外国文学小説
ISBN
9784488116026
発売日
2019/03/20
価格
1,015円(税込)

【前回の文庫双六】乱歩の言語感覚が脈打つ“タイトル”――野崎歓
https://www.bookbang.jp/review/article/568756

 ***

『野獣死すべし』の作者ニコラス・ブレイクは、実はイギリスの詩人セシル・デイ=ルイスの筆名。最高の称号「桂冠(けいかん)詩人」を持つ人がミステリを書いた。

 この人は本名で『オタバリの少年探偵たち』という愉快な児童小説も書いている。多才だ。映画ファンには三度アカデミー主演男優賞を受賞しているダニエル・デイ=ルイスの父親として知られている。

 ミステリの専門作家ではない文学者がミステリを書く。その例として、もうひとつ、A・A・ミルンの『赤い館の秘密』がある。

『クマのプーさん』の作者として知られるミルンがミステリ好きの父親のために書いた。ミステリ好きの多いイギリスらしい。

 一九二二年の作。第一次世界大戦と第二次とのあいだのいわゆる戦間期、平和な時代の作品だけに全体におっとりとしている。

 イギリスの田園地帯にある「赤い館」で殺人事件が起る。偶然、館を訪れた素人探偵が、それを解決する。

 イギリスのミステリに多い「館もの」。あまりに牧歌的なのでチャンドラーが批判した。日本では早くに江戸川乱歩が評価、紹介して古典となった。

 探偵役の飄々とした高等遊民の青年、アントニー・ギリンガムが魅力的。

 翻訳家でミステリ評論家の宮脇孝雄氏によれば、横溝正史が創り出した探偵、金田一耕助はこの青年に影響を受けたという。

 ミルンは第一次大戦に従軍した。戦争から戻って静かな田園暮しをしようとサセックスの農場を借りた。

 ここでミルンは息子のクリストファーとぬいぐるみのクマをモデルにして『クマのプーさん』を書いた。

 自然豊かな田園のなかからミステリと児童文学の古典が生まれた。

 ミルンが住んだコッチフォードという村の家は、ミルンの死後、人手に渡った。

 この家を買い受けたのがローリング・ストーンズのメンバー、ブライアン・ジョーンズ。六九年、ここで謎の死を遂げた。

新潮社 週刊新潮 2019年6月13日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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【文庫双六】乱歩の言語感覚が脈打つ“タイトル”──野崎歓

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 令和元・2019年6月6日 新潮社

【文庫双六】乱歩の言語感覚が脈打つ“タイトル”──野崎歓
 野崎歓
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乱歩の言語感覚が脈打つ“タイトル”

20190618a.jpg

『野獣死すべし』
著者
Blake, Nicholas [著]/永井 淳 [訳]
出版社
早川書房
ISBN
9784150710019

【文庫双六】乱歩の言語感覚が脈打つ“タイトル”――野崎歓

[レビュアー] 野崎歓(仏文学者・東京大学教授)

【前回の文庫双六】若き熱気が充満する大藪春彦デビュー作――北上次郎

 ***

 英国の「桂冠(けいかん)詩人」という名誉ある地位についたのだから、セシル・デイ=ルイスは立派な詩人だったのだろう。だがわが国ではもっぱら、彼がニコラス・ブレイク名義で書いたミステリーのほうが親しまれてきた。とりわけこの一冊である。

 主人公レインの幼い一人息子が轢き逃げ事故で死んでしまう。犯人は一向に見つからない。絶望の淵でレインは、自分の手で犯人を見つけ出し、復讐することを決意する。

 第一部はレインの「日記」という形式で、犯人らしき人物に接近し殺害計画を遂行するプロセスを描き出す。第二部は三人称の客観的記述。事態はレインの思いどおりとはいかない。そして第三部になると名探偵ナイジェル・ストレンジウェイズが登場し、入り組んだ謎の真相が明らかになる。

 三部形式が見事に決まっている。詩人の作と思って読むせいか、文章に香り高いものを感じる。謎解きはシンプルだが説得力があり唸らされる。80年以上前の作品とはいえ新鮮だ。

 表題は「伝道之書」を典拠とする、ブラームスの歌曲の歌詞から来ていると作品結末に説明がある。「獣は死すべき運命にあり、人もまた死ぬ、かくて獣も人もともどもに死すべき運命にある」という歌詞だ。

 聖書にあたってみると、これは結局、人間は動物に何ら勝るところはないという意味なのである。その文脈からすれば『野獣死すべし』は意訳というか、かなり感じが違う(原題はザ・ビースト・マスト・ダイ)。しかしもちろん邦題としてはインパクト大だ。文庫巻末に収録されている植草甚一のエッセーには、『野獣死すべし』という題は「昭和二十一年のことだが江戸川乱歩がつけた」とある。

 調べてみると、なるほど、早くも終戦の翌年、乱歩はイギリス探偵小説論の中でこの題で本作品に触れていた。

 本作品にちなむ大藪春彦の出世作のタイトルには、じつは乱歩の言語感覚が脈打っていたのである。

新潮社 週刊新潮 2019年6月6日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

【文庫双六】若き熱気が充満する大藪春彦デビュー作──北上次郎

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 令和元・2019年5月30日 新潮社

【文庫双六】若き熱気が充満する大藪春彦デビュー作──北上次郎
 北上次郎
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若き熱気が充満する大藪春彦デビュー作

20190617a.jpg

『野獣死すべし』
著者
大藪 春彦 [著]
出版社
光文社
ISBN
9784334723484

若き熱気が充満する大藪春彦デビュー作

[レビュアー] 北上次郎(文芸評論家)

【前回の文庫双六】ヴィヴィアン・リーのもう一つの代表作といえば――梯久美子
https://www.bookbang.jp/review/article/567246

***

『欲望という名の電車』を日本で最初に上演したのは文学座である。実は私、若いころに文学座にいたことがある。
 映画制作部という部署(私の記憶ではこの名称なのだが、なにしろ50年ほど前のことなので、これで合っているのかどうかは自信がない)が人を求めていて、応募したら採用された。初日は関係部署への挨拶まわり、2日目には杉村春子に挨拶、そして3日目に辞めた。大学を出てから7~8社、すべて3日で辞めていたころの話だ。働くとその時間、本が読めないという理由で辞めるのだから、迷惑な話である。

 ただ、その3日間の縁があったので、文学座にはずっと一方的に親しみを感じている。後年、文学座の研究所にいたという経歴を知っただけで松田優作のファンになったのもそのためだ。松田優作といえば、1980年に公開された映画『野獣死すべし』が忘れがたい。原作とはかなり違っていたからだ。これが伊達邦彦なのかと驚いたことを思い出す。

 原作を書いたのは、もちろん大藪春彦だ。『野獣死すべし』は大学在学中に大藪が書いた伝説のデビュー作で、そのデビューに江戸川乱歩が力を貸したというのは有名な話である。乱歩と大藪は、作家としての方向がまったく異なる。にもかかわらず、大藪をデビューさせるところに「編集者」乱歩の炯眼(けいがん)がある。

 個人的には、『復讐の弾道』『絶望の挑戦者』『黒豹の鎮魂歌』と同系列の復讐物語であり、そのタイプの代表作といっていい『傭兵たちの挽歌』をもっとも愛しているが、デビュー作にはその作家のすべてがあると言われているように、『野獣死すべし』には大藪春彦の美点がぎっしりとつまっている。

 これもまた復讐物語であり、後年の作品に比べれば、プロットは粗削りかもしれないが、若き大藪の熱気ともいうべきものが全編に充満していて、異様な迫力を生んでいる。

新潮社 週刊新潮 2019年5月30日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

これが名張市PRグッズどっせ

 この件です。

 今野書店:ミステリ大賞イベント参加募集締め切りました。(2019年6月3日)

 6月23日の本格ミステリ大賞記念イベントには、抽選で選ばれた参加者のみなさんにさらに抽選でプレゼントするお宝を用意せねばならんのですが、それはなんとかかき集めて某酒屋さんに発送してもらいました。

 用意したお宝が全然たいしたものではありませんので、特別に某酒屋さん謹製のおまけをつけてお受け取りいただくことにした次第です。

 それから、さらに自腹を切って椀飯振舞いたしますのが毎度おなじみ二銭銅貨煎餅。

 ほかに名張市から名張市PRグッズを発送していただく手筈になっているのですが、こんな詰め合わせになっております、と秘書広報室から教えていただきました。

20190616a.jpg

 ・名張市の取り組みなどをまとめた地図付きパンフ

 ・観光ガイドマップ

 ・江戸川乱歩を表紙にした「あめ3個」入り袋

 以上のセットです。

 イベントの参加者、関係者のみなさん全員にもれなくお受け取りいただけるよう、どーんと百セット、お送りいただきました。

 不肖なばりのたからもの第十号、名張市の宣伝に誠心誠意努めてまいりまっせ。

第65回江戸川乱歩賞

人事

第65回江戸川乱歩賞
 令和元・2019年6月6日選考 日本推理作家協会主催

「NOIRを纏う彼女」神護かずみ

 日本推理作家協会:Home

「女戦士フェチで…」江戸川乱歩賞受賞の神護かずみ氏

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産経新聞
 令和元・2019年6月7日 産経新聞社

「女戦士フェチで…」江戸川乱歩賞受賞の神護かずみ氏
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「女戦士フェチで…」江戸川乱歩賞受賞の神護かずみ氏

2019.6.7 17:21

20190614a.jpg

第65回江戸川乱歩賞に選ばれた神護かずみ氏=東京都文京区の講談社

 第65回江戸川乱歩賞(日本推理作家協会主催)に選ばれた神護(じんご)かずみさん(58)が7日、東京都文京区の講談社で会見し「大好きだった乱歩先生の名を冠する賞をいただき、感慨深い」と喜びを語った。

 受賞作の「NOIRを纏(まと)う彼女」は日本有数の消費財メーカー「美国堂」が舞台。傘下におさめた韓国企業の元トップがかつて、反日発言をしていたことがインターネット上にさらされ、美国堂は不買運動にさらされる。トラブル処理を任された西澤奈美は不買運動を仕掛けている団体に潜り込み、沈静化に尽力。そこで、ともに児童養護施設で育ったナミという女性に再会する…。

 「女性を主人公にした作品が好き。女戦士フェチと言いましょうか…。強い女性、強くあろうとする女性を書きたかった」と神護さんは題材を説明した。

 8歳のとき、父親に勧められて乱歩作の「少年探偵団」シリーズに出合い、そこから幅広い書籍を読んできたという神護さん。化学品メーカーに勤務しながら「ソノラマ文庫大賞」に応募したことがきっかけで、平成8年「裏平安霊異記」でデビュー。23年には伝記ホラー小説「人魚呪」で遠野物語百周年文学賞を受賞したが、ヒットとまではいかなかった。

 「自分の本が書店に並んだのは快感で、やみつきになった。もう一度、その光景を見たいという一心で続けてきた。(歴史ものなどでは)芽が出ないと思い、目先を変える必要があった。乱歩賞は5回目の応募。なんとなく書き方がわかってきて、半年間打ちこんだ」

 定年前に早期退職。会社員時代には土・日曜日にまとめて執筆していたが、集中できる時間が増えたためか、今回の受賞につながった。

 会見の冒頭、第26回に56歳で受賞した長井彬氏(「原子炉の蟹」)を上回り、史上最年長と紹介された。

「女戦士フェチで…」江戸川乱歩賞受賞の神護かずみ氏

 「新しい令和の時代に、古い人間が取ってしまって…」と恐縮した神護さんだが、選考委員の京極夏彦さんは「作風をガラリと変えて応募するのは、若い人にはできないチャレンジ。これまでの経験で、ふところは深くなり、引き出しは多いはず。僕はそろそろ引退したいが、これから活躍していただきたい」と2歳下の“新人”にエールを送った。

 神護さんは「ミステリーでもファンタジーものでも、あまり枠にはめず書いていきたい」と意欲をみせた。



 江戸川乱歩賞はこれまで西村京太郎(第11回「天使の傷痕」)、森村誠一(第15回「高層の死角」)、栗本薫(第24回「ぼくらの時代」)、東野圭吾(第31回「放課後」)、桐野夏生(第39回「顔に降りかかる雨」)、藤原伊織(第41回「テロリストのパラソル」)らが受賞している。

乱歩賞に神護かずみさん

ウェブニュース

時事ドットコム
 平成30・2018年6月6日 時事通信社

乱歩賞に神護かずみさん
 Home > 社会 > 記事

乱歩賞に神護かずみさん

2019年06月06日20時31分

 第65回江戸川乱歩賞(日本推理作家協会主催)は6日、神護かずみさん(58)の「NOIR(ノワール)を纏(まと)う彼女」に決まった。賞金は1000万円。贈呈式は9月26日、東京都内で。

伊勢志摩Bros.

雑誌

伊勢志摩Bros.
令和元・2019年5月21日 TOKYO NEWS B00K 通巻795号 東京ニュース通信社
A4判 95ページ 本体926円

乱歩が空想した“パノラマ島”を探検する
 鳥羽 > p61─63

 TOKYO NEWS magazine&mook:伊勢志摩Bros. 〜令和に行きたい、最新の伊勢志摩観光&カルチャーが盛りだくさん!〜

江戸川乱歩賞に神護かずみさん|「NOIRを纏う彼女」

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KYODO
 令和元・2019年6月7日 共同通信社

江戸川乱歩賞に神護かずみさん|「NOIRを纏う彼女」
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江戸川乱歩賞に神護かずみさん
「NOIRを纏う彼女」


2019/6/7 19:48 (JST)

©一般社団法人共同通信社

 第65回江戸川乱歩賞(日本推理作家協会主催)は6日、神護かずみさん(58)の「NOIRを纏う彼女」に決まった。賞金は1千万円。贈呈式は9月26日、東京都内で。

 神護さんは1960年生まれ。愛知県出身、東京都在住。96年「裏平安霊異記」でデビュー、2011年「人魚呪」で遠野物語100周年文学賞を受賞した。

森下雨村 小酒井不木 ミステリー・レガシー

書籍

森下雨村 小酒井不木 ミステリー・レガシー
 令和元・2019年5月20日初版一刷 光文社 光文社文庫
 編:ミステリー文学資料館
 A6判 カバー 425ページ 本体900円

江戸川氏と私
 小酒井不木
 随筆 小酒井不木 > p415─417
 初出・底本:大衆文芸 昭和2年6月号(2巻6号/1927年6月1日)
解説
 山前譲
 p418─425

 光文社:森下雨村 小酒井不木
中 相作

Naka Shosaku

Author:Naka Shosaku
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